国立中学は、国立大学が設置する付属校で、各大学の教育実習や教育研究をするのが目的の学校です。実際に、上部大学からの教育実習が多く、実験的な授業が行われているケースもあります。「生徒は実験されているのでは」と指摘する声もありますが、一方でその分野に秀でた教員が授業を担当したり、最先端の教育研究の恩恵を受けることができる、などのメリットが国立中学にはあります。
国立中学には、大学付属の名はついていますが、上部大学進学への特典や優遇はまったくありません。たとえば筑波大附属高校から筑波大への進学者も例年いますが、すべて一般受験による合格者です。唯一の例外として、お茶の水女子大附属では平成20年度から、上部大学へ10名程度の特別推薦枠を設ける予定です。
カリキュラム(教育課程)は公立中学に類似
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国立中学の教育課程や施設は、公立中学に近いものといってよいでしょう。私立中学のような入学金・授業料・施設費などの「収入」がありませんから、学校経営・運営にあまり費用をかけられないという事情があります。国立中学の学校用地は広いところが多く自然環境には恵まれていますが、校舎はどちらかといえば古く、食堂はなく食品販売をしているのも約半数程度、冷房が入っている学校は半数以下。私立中学のように最新の教育施設を整備というレベルではありません。 |
教育課程(カリキュラム)は、学習指導要領を遵守するなかで、創意工夫して特色ある教育を実践している例もありますし、6年間を2年ずつ3期に分け基礎期・充実期・発展期とした教育課程を組む(東京大教育学部附属)、2週間で一巡するカリキュラムを組む(東京学芸大附属世田谷)、中2から中3と合同の講座選択授業を設置(横浜国立大教育人間科学部附属横浜)など。しかし週5日制で、「総合的な学習」(総合的な学習の評価(中学校編))その他、教科以外の授業や活動もきちんと行わなくてはならない国立中学では、時間割に限界があります。
私学では主要教科に重点をおいた授業展開をするのが普通ですが、国立中学ではそういった編成はしていません。主要教科への時間配分、授業のボリュームは公立中学並みといってよいでしょう。私立中学の進学校のように、中学から主要教科に重点を置き「習熟度別授業」や「先取り学習」も導入して大学受験にも対応できる学力をつける、というような指導体制は、国立中学ではとられていません。
高校の教育課程もほぼ同様で、授業自体はきわめてレベルが高く、生徒はよく勉強します。しかし大学入試への対応という点では、国立中学は、ほぼ公立高校並みというのが実情でしょう。筑波大附属駒場、お茶の水女子大附属、筑波大附属、東京学芸大附属などはその偏差値に見合うような優秀な大学合格実績をあげていますが、それは生徒自身の努力(塾や予備校の利用を含めた)によるところが大きいようです。
生徒全員が併設高校へ内部進学できるのは3校程度のみ
国立中学には、高校を併設している学校と、高校がない学校とがあります。高校を併設するところでも、その進学状況には学校によってさまざまな形態や実情があります。東京大教育学部附属と東京学芸大附属国際大(旧東京学芸大附属大泉)は中等教育学校ですから、中学・高校の区分けはなく、全員が中高一貫の教育を受けます。
国立中学で唯一の男子校・筑波大附属駒場は原則として高校へは全員が進学できるとされ、内部進学率は100%といっていいでしょう。なお同校の場合は高校で外部募集があって、高1から内部進学生と外部進学生が混合でクラス編成がなされます。
併設高校への進学状況
国立中学は、併設高校への進学に審査や選考があります。
例えば東京都の国立中学である、お茶の水女子大附属の女子と筑波大附置は、在学中の成績と高校が行う試験によって、進学が決定します。内部進学率は、両校とも約80%。中学入学者の場合、よほど怠けなければ大丈夫といえるラインでしょう。
東京学芸大附属小金井・世田谷・竹早の3校は、同高校への進学に特典も優先もなく、一般受験生と同じ入試を受け、合格しなければなりません。そのうえでの進学率は、学校や年によってバラつきがありますが30%弱から40%台です。
なお国立中学から、併設の国立高校への進学率が高いかどうかを判断する際には、これらの学校には附属小学校があり、そちらからの内進生が中学で多数派を占める、という現状に留意しなくてはなりません。中学受験(中学入試)を経験しない内進生の方が多数派であれば、そこから「学力的に併設高校へ進学不可となるのは内進生が中心なのでは」との推測もできます。したがって中学入学者だけを見れば、併設高校への進学状況は、公表される数値よりかなり高くなるはず、という指摘も、国立中学にはあります。
併設高校のない国立中学では外部受験が必要
国立中学のうち中学だけの学校では高校進学時、公立の中学生と同じ条件で高校受験することになります。高校が女子校になるお茶の水大附属の男子も同じです。それらの生徒は総じて、模試では高い偏差値を獲得し、高校入試では優秀な「実績」をあげています。
お茶の水女子大附属の男子は、私立高校と公立高校に進学しますが、前者のほうが多数派を占めているようで、慶應義塾・慶應義塾志木・早大高等学院などの難関校にも多くの合格者を出しています。
横浜国立大附属横浜と同鎌倉でも卒業生の半数以上は、慶應義塾・桐蔭学園などの神奈川県内を中心とする私立高校に進学しています。
千葉大附属では、卒業生の半数以上が渋谷教育学園幕張・東邦大付属東邦などの私立高校へ進学、また筑波大附属・お茶の水大附属など東京都の国立高校への合格者もいるようです。
埼玉大附属は、私立進学者が圧倒的といってよいくらいの多数派を占めているということです。その進路は、慶應義塾志木・淑徳与野などの埼玉県の私立中学のほか早大学院など東京都の私立も含まれます。また筑波大附属・お茶の水大附属など東京都の国立高校への合格者もいます。埼玉大附属生の場合は、「きわめて都内志向が強い」といえそうです。
国立中学では生徒の学力や偏差値が全体的に高いため、その中で良い成績をとるのはたいへんです。そのため中学校での「成績=内申」が選考に影響する公立高校入試は避けて、当日点や偏差値が勝負の要となる私立を受験するケースが多い、という要素も、国立中学の生徒にはあるでしょう。全国高校・中学偏差値総覧(2007年度版)
国立中学の受験状況
国立中学の選抜方法は独特で、私立とはかなり違っています。まず地域制限があって、筆記試験のほかに抽選があります。筆記試験は学校によって2教科・4教科・全教科、それに体育実技があるケースもあります。
(なお、ここで書かれている募集人員の数値や入試日程などは、2007年の要項に基づいたものになりますので、2008年度以降は変更になる場合がありますから注意してください。)
国立中学は募集人員が少なく、いちばん多いのが筑波大附属駒場の120名。あとの学校は男女込みで20~80名台、男女別では10名台~40名台となっています。人数的にはかなりの狭き門ですが、難度は学校によって違います。
筑波大附属駒場は私立中学の男子校最難関、開成中学より難しい学校と位置づけされます。偏差値も80に達しています。筑波大附属は、男女とも難関校でほかの東京都の国立中学も、難関校か上位校のレベルです。お茶の水女子大附属の男子、横浜国立大附属横浜、同鎌倉、千葉大附属、埼玉大附属は、それぞれ中堅校にランクされます。
国立中学は、かつてはすべて名門校と位置づけられ、相当偏差値も高いランクに位置していましたが、現在は学校によって人気・レベルとも差が開いています。全体的に私立に押されて地盤沈下、という時期もありましたが、その傾向には歯止めがかかり、国立中学の応募状況はその年によって変動しています。
国立中学は私立中学と組み合わせて中学受験
国立中学の入試は、東大附属が推薦を早い時期に行うほかは、私立中学と同じ時期になっています。埼玉大附属は、県内私立と競合しない東京都の私立と同時期に実施され、横浜国立大附属横浜と同鎌倉は、試験日が一日違いで両校併願が可能、実際にそれをする中学受験生もいます。東京都の国立中学はすべて試験日が2月3日で、2月1日の学校や2日の学校からの併願受験者も多く集め、2月3日の私立と激しく競合しています。
このような入試日程のなかで、国立中学を目指す受験生は国立中学受験を私立中学受験に組み込む形で併願しています(受かる!合格「完全」作戦!)。しかし、前に述べたように国立中学と私立中学では施設から教育内容までかなり違いますので、そのあたりは十分に検討しておく必要があります。
国立中学の規制緩和がすすみ情報公開が促進
国立中学の選抜は、改革・改善が進み受けやすい形に変わっていますが、まだ私立とは違う点があります。
まず、応募条件として通学区域があります。私立のように「好きな学校なら遠くても通いたい」という選択はできません。通学区域には、たとえば「東京23区と横浜市全域」や「大阪市在住者のみ」というように地域で指定する場合と、「通学に要する時間が1時間内程度までに居住している者」というように通学時間で制限しているケースの2通りがあります。
国立中学の通学区域はこれまで、毎年のように拡大する学校があって、規制緩和が進みました。今後暫さらに拡大、あるいは規制撤廃を期待したいところです。
また国立中学には、筆記試験や実技とは別に抽選があります。「優秀な生徒を独占しないため」という建前論の名残りですが、この「運頼み」の選考は次々に廃止され、今では、実施しているのは東京大附属と千葉大附属の2校のみになりました。国立中学も、ほとんどが「学力勝負」の選抜になったといってもいいでしょう。なお筑波大附属駒場は例年、応募者が規定数を超えていないため抽選を行っていません。
国立中学では、以前は行っていなかった学校説明会も、一部を除き1回ないし2回は開かれるようになっています。学校の中身がオープンになって、受けやすくなっています。これは受験生にとってよい傾向といえるでしょう。
国立中学受験には、私立とは違う独自の受験対策が必須
国立中学の選抜方法は学校によって、学科試験・体育実技・作文・適性検査などで行われます。学科試験は2教科・4教科・7教科(国算理社音図家)の3通りです。
私立中学とはかなり違いますから、国立中学を受験するなら独自の対策が不可欠でしょう。4教科入試と2教科入試は、私立と同じですが、問題傾向が違います。国立中学の場合は、小学校の学習領域を逸脱するような出題はしませんが、その範囲の中で思考力を問うような独特の作問がなされます。
なお国立中学の次年度入試要項が判明するは、10月以降(説明会で公表されるのが一般的)になるでしょう。その前に実施される学校行事で見学できるものもありますから、関心のある人は早めに学校訪問を心がけましょう。またホームページでも、かなりの情報や映像を見ることができます。